第5節 標準とは
- この人生に、標準などというものは、ない。
が、1つの時代に、ある中心勢力によって示された「型」は、標準と呼ばれている。
- ここに、お目にかける文書心得は、たしかに、「標準的なもの」の1つかも知れない。
- これを、標準と思ったとき、諸君が、職場において、あの点、この点で、この文書心得で言っているところと違った「型」を要求されたならば、諸君は、柔順に、その職場での「型」にしたがわれよ。
- しかし、その職場での「型」が、あまりによくないと思われたならば、諸君が、その職場で、発言力ある存在となられたのち、その職場の「型」を改善したまえ。
- それまでは、辛抱されることである。
- もっと、ひどい例を言う。
この学校で、ある先生が、諸君の、この文書心得流のレポートを見て、「なんで、こんなバカでかい文字を書くんだ」「なんで、こんな真四角な文字を書くんだ」とおこられ、講師会でも、それに言及された。
- こまったことは、そうして、おこられた諸君が、こんどは、わたくしの週論で、小さな文字を書いて、パスしなかったことである。
- 学校では、「リンゴが木から落ちるのは、万有引力に由るからである」と教える。
これは、自然科学上の知識で、どこに行っても通用する。
ところが、同じ学校で「道路は左側を歩け」と教える。
これは日本とイギリスに通用するだけで、アメリカやドイツで通用しない。
要するに、流儀の相違というところ。
で、文字の書き方にも、幾とおりか流儀がある。
ある先生の書き方によれば、早く書けて読みやすい。
わたくしの書き方によれば、始めおそく書けて、しばしば読みづらい。
しかし、わたくしの書き方で、半年、1年と書いていれば、早く書けて不思議と美しく、また、読みやすい文字が書けるようになる。
で、わたくしは、「急がば回われ」で、このような書き方を求めるのである。
- ある年のことであった。
その年のクラス委員長以下、わたくしのこの流儀を見て、ナンセンスであると決めつけた。
それにかかわらず、正直に年間30回の週論を提出した。
文字の形や仮名づかいなどが目茶苦茶。
それでも、ひとつの意思表示のつもりであったろう。
わたくしは、もとより、毎回20点をつけた。
で、学年末には落第点をつけた。
- こういう、おろかな抵抗をこころみるならば、さっさと学校をやめたらよい。
そのようなことをしたからといって、わたくしが妥協するものでない。
第1章
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